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< 連載物語『足跡』の復刻について 復刻版『足跡』 [第1回] [第2回] [第3回] [第4回] [第5回] 復刻版『足跡』 --[第5回]-- 「T道場にて」もう昔の事なのでこれから書く事は順番が間違っているかもしれません。 入門初日、返事・挨拶は「押忍」など、基本的な礼節の話の後、稽古が始まりました。ピーンと張りつめた独特の雰囲気の中、準備運動、基本と進んでいきます。何もわからないまま、見様見真似でついていくのに必死でした。当時の城西支部は入門10回目までは基本のみを行うという事で、基本が終わってもまた別の所に移って茶帯の先輩にもう一度基本を教えてもらっていました。 しかし、倒されている人を見て恐いというよりは倒している先輩がカッコ良く見えて、いつか自分もああいうふうになりたいと思っていました。以前にも書きましたが、当時は常設道場が代田橋1ケ所しかなかったので、その他の道場はだいたい練習日が週2日しかありません。10回基本をやるのに5週間かかります。早くスパーリングやその他の稽古をやりたい僕は、他の道場も行けば毎日練習ができると思い、H道場やT道場にも行く事にしました。 初めてT道場に行った時の事です。そこは長身のN先輩(当時)が教えていました。稽古の内容は忘れましたが、終わりが近づいてきた時、1人の人がドアを開けて中に入ってきました。 「押忍!」 と、しっかりあいさつをしています。僕は、「どこかで見た事ある人だなあ」と思っていました。すると、N先輩がみんなに紹介するように 「本部道場の松井先輩です」 と言いました。 稽古も終わり、みんな帰っていく中、松井館長は鏡に向かってゆっくりシャドーをしていました。あまりの動きの凄さ(というより美しさに近い)に、もっと見ていたいと思った僕は、わざとゆっくり着替えてジーッと見とれていました。とうとう1番最後になってしまったので仕方なく帰る事にしました。何かひとことでも話してみたいと思った僕は、帰りにN先輩と話をしていた館長の目の前に立ち、大きな声で 「押忍、失礼します!」 と言うと、館長はチラッとこちらを見て「オス」と言って違う方を向いてしまいました。 「お疲れ」 と言われて終わってしまいました。(よく考えれば当たり前ですが.....) < 復刻版『足跡』第4回へ 復刻版『足跡』第6回へ(近日公開) > |